はじめに
売上が伸び、従業員も増え、一見すると順調に見える時期ほど、実は資金繰りの難易度が格段に上がることをご存知でしょうか。
特に年商が3億円を超え、5億、7億円へと成長していくフェーズは、資金の動きが急激に激しくなる「増収の罠」とも呼べる危険な領域です。
売上の拡大にキャッシュの供給が追いつかず、帳簿上は利益が出ているのに手元の現金が枯渇する。
この状態を回避するための有力な選択肢となるのが、短期継続融資(短継)の導入です。
この記事で分かること
- なぜ売上が増えるほど資金繰りが苦しくなるのか
- 短期継続融資(短継)の仕組みと計算式
- 証書貸付から短継へ切り替えるメリットと留意点
経常運転資金と短期継続融資の基本
商売を続ける上で、常に会社の中に「寝てしまうお金」が発生します。
これが経常運転資金です。
例えば、商品を仕入れてから販売し、その代金が実際に入金されるまでにはタイムラグがあります。
その間、仕入代金や人件費などの支払いは先行するため、現金は「在庫」や「売掛金」という形に姿を変えて拘束されます。
事業が継続する限り、この資金がゼロになることはありません。
◆ 必要な運転資金の計算式
一般的に、以下の式で算出される金額が、会社の中に常に留まっておくべき「経常運転資金」の目安となります。
経常運転資金 =
売掛金 + 受取手形 + 在庫 ー 買掛金 ー 支払手形
この計算で導き出された金額は、会社が事業を継続する限り常に固定的に必要となる資金(=外部から安定的に調達しておくべき資金)です。
◆ 短期継続融資とは何か
短期継続融資(短コロ)とは、この経常運転資金を賄うための融資手法です。
主に「手形貸付」や「当座貸越」という形式をとります。
- 手形貸付:
1年以内の短期で借り、期日に同額の新しい手形で「書き換え(転がし)」を行う。
- 当座貸越:
決められた枠の範囲内で自由に出し入れし、実質的に枠一杯まで借り切った状態で運用する。
長期の「証書貸付」が毎月元金を返済していくのに対し、短継は原則として元金返済を伴わず、期日に更新を繰り返すことで継続します。
つまり、事業活動によって「拘束」されている資金を、そのまま外部資金で補填し続ける仕組みです。
なぜ成長期に「増収の罠」が潜んでいるのか
年商が3億円、5億円と増えていくと、先ほどの計算式にある「売掛金」や「在庫」の額も比例して膨れ上がります。
例えば、取引先が増えて回収サイト(入金までの期間)が延びたり、欠品を防ぐために在庫を積み増したりすると、必要な運転資金は一気に跳ね上がります。
年商1億円の時に1,000万円だった必要額が、年商5億円で5,000万円になることも珍しくありません。
この不足する4,000万円を、すべて毎月返済が必要な「証書貸付」で調達すると、
本来は外部からの調達で据え置いておくべき運転資金を、無理やり利益の中から削って銀行に返していくことになります。
利益が出ているのに、返済と増収に伴う資金需要のダブルパンチで残高が減り続ける。
これが「増収の罠」の本質です。
銀行交渉における留意点
短期継続融資は非常に有効な手法ですが、いくつか留意すべき点もあります。
- 業況による更新停止のリスク
短継は「原則更新」ですが、業績が著しく悪化した場合には、銀行から更新を拒絶されたり、一部圧縮(返済)を求められたりすることがあります。
- 銀行方針や業種による違い
回収サイトが極端に長い業種や、在庫特性によっては、銀行が慎重な姿勢を示すこともあります。
銀行が短継を認めるかどうかは、単なる年商の多寡ではなく、
自社の「経常運転資金」がいくらなのかを正確に説明し、その資金が健全に回っていることを、
試算表や資金繰り表から正しく認識させられるかどうかにかかっています。
まとめ
短期継続融資は、成長企業のエンジンを止めないための「潤滑油」になり得る手法です。
本来は外部資金で据え置いておくべき「経常運転資金」を、無理に利益から返済し続けていないでしょうか。
業種や回収サイクルの特性を踏まえつつ、証書貸付に偏った借入構造を適切に見直すことで、
資金繰りの安定化を図り、攻めの経営に専念できる環境が整います。
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